今回は、1723年に英国で鋳造された1シリング銀貨を紹介します。
1723年といえば、日本の暦では享保8年にあたり、暴れん坊将軍でお馴染みの八代将軍徳川吉宗の時代です。
そして、英国ではハノーバー朝開祖のジョージ1世の治世(1714-1727) でした。
アン女王ご崩御後、カトリックの国王を避けるために、英国がドイツから国王を迎えるとは、何とヨーロッパはインターナショナルなことでしょうか。
また、ドイツ生まれで54歳で即位したジョージ1世はドイツ語しか話さ(せ?)ず、政治はウォルポールにお任せだったとのこと。
「君臨すれども統治せず」
そう学校で習い、その言葉にどこか高尚な響きを感じていた私ですが、その理由が英語が話せなかったからとは!
色々面白いです。
銀の含有率が92.5%のスターリングシルバーで作られており、重さは6.02g、直径は26mmあります。
表は、右向きのジョージ1世の肖像が描かれています。
ジョージ1世の肖像は2種類あり、
第1肖像は、1715年ー1723年、
第2肖像は、1723年ー1727年
に使われました。
この銀貨は、1723年と丁度端境期に作られたものですが、前者の肖像です。
周りの銘はラテン語で、GEORGIVS・DG・M・BR・FR・ET・HIB・REX・F・D と記されています。
英語にすると、George, by the Grace of God, King of Great Britain, France and Ireland, Defender of the Faith。
日本語では、ジョージ(1世)、神の恩寵によって、グレートブリテン、フランス、およびアイルランド国王、信仰の擁護者、でしょうか。
GEORGIVSは、ジョージでジョージ1世とは書かれていません。
言ってみれば、ルパン3世のおじいさんがただのルパンで、ルパン1世とは名乗っていなかったのと同じような感覚でしょうか。
M・BRは、Magna Britanniaの略で、グレートブリテン。
ただのブリテンではなくグレートブリテンなのは、1707年の合同法でイングランドとスコットランドの議会が統一されて、合併されグレートになったからかもしれません。
FRは、フランス。
なんでフランス?という話は、また別の機会にしたいと思います。
そして(因みに、ETはフランス語と同じでand)、HIBはHiberniaの略で、アイルランドのことです。
REXは、国王。
F・DはFidei Defensorの略で、Defender of the Faith、信仰の擁護者の意です。
彫刻師は、ドイツ・ザクセン生まれのJohn Croker (1670-1741) です。
裏は、中央にガータースター、その上下左右にジョージ1世の紋章が配されています。
上:左側はイングランドを表す3頭のライオン、右側はスコットランドを表す1頭のライオン
右:フランスを表す3つの百合の花
下:アイルランドを表すハープ
左:ハノーバー家の家紋
そして、この4つの紋章の間に、SSとCが斜めに2つずつ配されています。
このSSとCは、1711年に設立されたthe South Sea Company (SSC) 南洋会社のことで、このSSとCのデザインは1723年のみ使われました。
この1723年の銀貨は、1722年に南洋会社がインドネシアで発見した銀を持ち帰って鋳造されたとのことです。
(南洋会社の担当区域はカリブ海や南アメリカ方面で、アジアの担当は東インド会社だったのではないかと思うので、なぜインドネシアで銀を発見したのかについては、別途調べてみたいと思います。)
周りの銘はラテン語で、BRVN ET・D VX S・R・I・A: TH ET・EL ・1723・と記されています。
英語では、Duke of Brunswick and Lueneburg, Arch Treasurer and Prince Elector of the Holy Roman Empire。
日本語にすると、ブラウンシュヴァイク=リューネブルク公爵、神聖ローマ帝国財貨長官、及び、選帝侯、となります。
彫刻師は、スイス・ベルン生まれのJohann Ochs (1673-1749)です。
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