マーキュリー・ダイム銀貨は、1916年から1945年まで鋳造されていました。
それ以前にはバーバー・ダイムが、それ以後にはルーズベルト・ダイムが、それぞれ作られています。
参考:⇒ 「米国 ルーズベルト・ダイム(10セント)銀貨 1964年」
通常、硬貨のデザインが変更されるのは、為政者が変わったりした際などですが、なぜこのダイムのデザインは1916年に変えられたのでしょうか。
1916年といえば、ヨーロッパを中心に第一次世界大戦の真っただ中の年です。
ということで、何か戦争に関係する理由があるのかと思ったのですが、違いました。
私は、この真相を聞いて、もう少しでひっくり返えるところでした。
その真相とは、、、。
貨幣発行に関わる法律の解釈に勘違いがあったからとのこと。
造幣局が、「硬貨のデザイン変更は25年以上経たたないとできない」という法律を、「25年経ったらデザインを変えなければいけない」と解釈してしまい、改訂作業に入ったというから笑えます。
確かに、バーバー・ダイムは使用開始が1892年なので、ほぼ25年経っています。
また、散々マーキュリー・ダイムと書いてきて、今更いうのも何ですが、マーキュリーというのは通称で、実際にはローマ神話の神マーキュリー(メルクリウス)とは全く関係がないとのこと。
正式には、ウィングド・リバティー・ヘッド・ダイム Winged Liberty Head Dime というそうです。
その辺りの話も含めて、デザインを見てみましょう。
表は、羽付きのフリジア帽を被った、左向きの自由の女神が描かれています。
フリジア帽とは、古代ローマで解放された自由身分の奴隷が被った赤い三角帽で、隷従から自由への開放の象徴だとのこと。
また、羽は、思想の自由を表しているそうです。
自由の女神といえば、フランスの象徴であるマリアンヌは、フランス革命時にフリジア帽を被っていた自由の女神です。
そして、ニューヨークにある自由の女神像は、米国の独立百周年を記念してフランスから贈られたもの。
また、10セントを表すダイムも、元はフランス語です。
やたらとフランスと関係しているように思えますが、何かあるのでしょうか。
銘は、LIBERTY, IN GOD WE TRUST, 1941。
彫刻師は、表も裏も、ドイツ生まれの米国人彫刻家の Adolph Alexander Weinman (1870-1952)です。
イニシャルの AとWを組み合わせたモノグラムが、首の後ろに見えます。
裏は、中央にファスケス、その横にオリーブの枝が描かれています。
ファスケスとは、斧の周りに木の束を結び付けたもので、古代ローマ(また古代ローマが出てきました)権威の象徴だったとのこと。
米国上院や連邦裁判所の紋章にも使われています。
一方、オリーブの枝は、平和の象徴です。
前述したように、1916年と言えば、第一次世界大戦の3年目。
米国は、ドイツによる無制限潜水艦作戦を受けて、その1年後の1917年に参戦しました。
つまり、1916年はまだ米国は中立を保っていた時期です。
ということで、ファスケスとオリーブの枝には、参戦の準備と平和の願いの両方が込められていたとのことです。
銘は、E PLURIBUS UNIM, UNITED STATES OF AMERICA, ONE DIME。
E PLURIBUS UNIM は、ラテン語で Out of many, one の意。
ONE の右にある S は造幣局のマークで、サンフランシスコ造幣局を表しています。
尚、1941年の S には、通常の大きさのものと、通常より小さいものがあるらしいですが、このダイムは通常の大きさのもののようです。
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