他の記事では Dollar は日本語らしくドルと表記していますが、今回の Half Dollar は英語っぽくハーフ・ダラーと表記します。
個人的な趣味かもしれませんが、ハーフ・ドルでは和洋折衷で中途半端ですし、純日本語の半ドルではこの銀貨にしっくり来ない感じがするからです。
ウォーキング・リバティー・ハーフ・ダラー銀貨は、1916年から1947年まで鋳造されていました。
それ以前はバーバー・ハーフ・ダラー(1892年ー1915年)、以後はフランクリン・ハーフ・ダラー(1948年ー1963年)が作られています。
1916年にデザイン変更になった経緯は、マーキュリー・ダイムと同様です。
表は、左に向かって歩く自由の女神が描かれています。
左腕でオリーブの枝を抱え、右手を前方に伸ばしています。
そして、この銀貨ではちょっと見づらいかもしれませんが、肩に米国の星条旗をかけています。
確かに、よく見ると、右腕の向こう側に星条旗の左上にある星が見え、また、スカートの裾のように見える足の辺りには星条旗の横縞模様が見えます。
そして、左下には、日本の旭日旗のような太陽が描かれています。
この銀貨は、米国のコインの中でも芸術性が高いと言われていて、確かに美しいのですが、私としては珍しく批判をしてみたいデザインなので聞いて下さい。
左側の太陽は、東の水平線から昇る朝日だとのこと。
ちょっと待って下さい。
もちろん、北側から南を見れば、確かに左が東になります。
しかし、普通に考えれば、常識的に言って、右側が東でしょう。
地図がみんなそうなのですから。
デザイナーも最初はそう考えたはずです。
それでは、なぜ太陽が左側になってしまったか。
それは、デザイン的に、星条旗の星をどうしても左側に持ってきたかったからだと思います。
そして、太陽に向かって歩くには、太陽を左側に持ってくるしかなかったのです。
デザイナーも大変です。
この勢いを借りて、もうひとつケチを付けたいと思います。
肩に米国の星条旗を「かけている」と書きましたが、これだけ旗が左になびいているということは、かなりの強風が右から吹いています。
それは、旗が足にぴったりと纏わりついていることからも見て取れます。
個人的な経験を述べると、私は学生時代に応援部に所属していて、旗を持つ機会が多くありました。
風をはらんだ旗というのは思った以上に力が強いのです。
ヨットのように張ってはいませんが、疾走するヨットのセールを想像して下さい。
油断していると、体ごと持っていかれます。
それを避けるためには、風が吹いてくる方向に旗(このデザインの場合は体)を傾けて、力をバランスさせるしかありません。
前から吹いている場合は前傾姿勢、後ろからの場合は後傾姿勢を取る必要があり、このデザインの場合は、後ろに反る必要があります。
しかし、この女神は地面に垂直に棒立ちしています。
こんな棒立ちでは、後ろからの風に押されて、「おっとっとっと!」という感じで、前のめりになって押し出されていくはずです。
呑気に、右手を前に伸ばしている場合ではありません。
どちらかというと、手のひらを下に向けて、「あれー!」の方が相応しいところでしょう。
おまけに、旗が足に纏わりついています。
「おっとっとっと!」という状況では、すぐにでも足に絡んで、転んでしまうこと必至です。
ということで、個人的にはちょっと現実離れしたデザインだと指摘したいところなのです。
長々と失礼しました。
銘は、LIBERTY, IN GOD WE TRUST, 1936。
ということで、個人的には裏のデザインの方が好きです。
裏は、止まり木に止まり、堂々と羽を広げた、米国の国鳥である白頭鷲が描かれています。
銘は、UNITED STATES OF AMERICA, E PLURIBUS UNIM, HALF DOLLAR。
E PLURIBUS UNIM は、ラテン語で Out of many, one の意。
造幣局は、デンバー造幣局。
HALF の左側にDと、デンバー造幣局のマークが見えます。
彫刻師は、表も裏も、ドイツ生まれの米国人彫刻家で、マーキュリー・ダイムのデザインも手掛けた Adolph Alexander Weinman (1870-1952)です。
DOLLARの右に、イニシャルの AとWを組み合わせたモノグラムが見えます。
にほんブログ村
0 件のコメント:
コメントを投稿