2020年3月20日金曜日

4.なぜジョージ4世以降の銅貨の銘はBRITANNIAではなくBRITANNIARと最後にRがつくのか(まとめ編)

今回は、まとめ編です。

これまでの経緯は、以下を参照して下さい。

⇒ 1.なぜウィリアム4世以降の銅貨の銘はBRITANNIAではなくBRITANNIARと最後にRがつくのか(照会編)

⇒ 2.なぜジョージ4世以降の銅貨の銘はBRITANNIAではなくBRITANNIARと最後にRがつくのか(回答編1)

⇒ 3.なぜジョージ4世以降の銅貨の銘はBRITANNIAではなくBRITANNIARと最後にRがつくのか(回答編2)

<疑問>

「なぜジョージ4世以降の銅貨の銘は、BRITANNIAではなくBRITANNIARと最後にRがつくのか」

<回答>

ジョージ3世まで使われていたBRITANNIAはラテン語で、英語のBritain、つまり英国を表しているとのことです。

このブリタニアは国名であって、中央に描かれている女神とは違い、英国を擬人化したブリタニア女神のことではないとのこと。

一方、ジョージ4世以降に使われているBRITANNIARもラテン語だが、上記BRITANNIAの複数形の所有格であるBRITANNIARUMの略語であるとのこと。

その意味するところは、英語で of the British territories。

そして、コロン(:)の後のREX(国王)またはREG(REGINAの略、女王)とセットで、

BRITANNIAR: REX = king of the British territories (英国領の国王)、または、

BRITANNIAR: REG = queen of the British territories(英国領の女王)を表している。

ここでいうBritish territories(英国領)とは、イングランドとスコットランドのあるブリテン島と、アイルランド島、及び周辺の島々のことで、いわゆる海外の植民地のことではないとのことでした。


<銘の変更理由>

銘が変更された理由としては、1801年にグレートブリテン王国(イングランドとスコットランドの連合王国)が、それまで植民地だったアイルランド王国と連合したのが理由ではないかと提起。

それによって、British territories(英国領)と複数形に変わったのではないか、と。

この推測について、大英博物館に問い合わせたところ、明確な答えは得られませんでした。

ただし、アイルランドとの関連でいうと、アイルランドは古来 Hibernia と呼ばれ、Britannia とは別の名前であった、と付け加えてくれました。

If there is a connection with Ireland it may be because Ireland is traditionally represented by Hibernia, not Britannia, but this is just supposition on my part. Evidence for the change might be in one of the coinage acts, which are in Hansard in the National Archives. Or the Royal Mint Museum may know.

また、大英博物館の方との遣り取りを通じて、最終的な解決には、銅貨の銘だけでなく、金貨、銀貨の銘を含めた総合的な考察が必要だということが分かりました。

ということで、とりあえず一旦ここで中締めとさせていただきます。

最後に、今回の探求では、ビクトリア&アルバート博物館と大英博物館の学芸員の方に大変お世話になりました。

熱く御礼申し上げます。

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2020年3月1日日曜日

3.なぜジョージ4世以降の銅貨の銘はBRITANNIAではなくBRITANNIARと最後にRがつくのか(回答編2)

前回、BRITANNIARとは、英語の「British territories(英国領土)の」を表すラテン語のBRITANNIARUMの略語であると分かったという話を紹介しました。

⇒ 「2.なぜジョージ4世以降の銅貨の銘はBRITANNIAではなくBRITANNIARと最後にRがつくのか(回答編1)」

そして、最後に「British territories(英国領土)とは具体的にどこを指すのでしょうか?」と疑問を提起しました。

それに対する回答が、ビクトリア&アルバート博物館から来たので紹介したいと思います。

結論から言うと、British territories(英国領土)とは、イングランドやスコットランドのあるブリテン島と、その隣りのアイルランド島、及び周辺の島々を表す、ブリテン諸島 British Isles (Islands) を指すとのことでした。

そして、海外の植民地は含まれないとのこと。

私は、territories(領土)と聞いたときに、「領土」という語感から、海外の植民地を指すと勝手に思い込んだのですが、そうではなかったということです。

('British territories' are the British Isles' (and not overseas colonies). )

では、なぜジョージ3世までは単数形のBRITANNIA(Britain)が使われ、ジョージ4世からは複数形のBRITANNIAR(of the British territories)が使われるようになったのでしょうか。

考えられるのは、1801年のアイルランドの併合です。

それまで、アイルランド王国は、グレートブリテン王国(イングランドとスコットランドの連合)の植民地でした。

それが、1800年の連合法によって、1801年にグレートブリテン及びアイルランド連合王国となったのです。

それが理由で、British territories(英国領土)と複数形に変わったのではないでしょうか。

ただし、これはまだ私の推測です。

ということで、確認するために、今度は大英博物館に以下の通り照会してみました。

(ビクトリア&アルバート博物館から、更なる質問は大英博物館の方がよいとの示唆を受けたためです。)

Someone told me that BRITANNIARUM is the Latin possessive plural form of BRITANNIA, which means 'of the British territories' or 'of the British Islands'. Is it possible to suppose that the reason why they didn't use single word 'BRITANNIA' any more but used plural word 'BRITANNIARUM' is because since 1801 Ireland had become part of United Kingdom of Great Britain AND Ireland, two, more than one, territories/Islands?

因みに、ジョージ3世の治世は、1760年から1820年までです。

1801年は、その途中ということになります。

そして、1801年以降に作られたジョージ3世の金貨で、BRITANNIAR(UM)が使われているものがあります。

一方、ジョージ3世の銅貨では、1801年以降でも、BRITANNIAが使われています。


金貨と銅貨で対応が異なる件については、また別途検討ということで。

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