2021年5月19日水曜日

英国 ビクトリア女王 ファージング銅貨  1842年

英国で1842年に鋳造された、1ファージング銅貨を紹介します。

1ファージングは、4分の1ペニー。

直径は22mm、重さは4.72gです。



使われている肖像は、ビクトリア女王が18歳の時のものですが、このファージング銅貨が作られた1842年時点では、ビクトリア女王は新婚2年目で23歳になっています。

当時の女王の姿が、1842年5月12日のプランタジネット舞踏会の絵として残っています。



































Queen Victoria and Prince Albert at the Bal Costume of 12 May 1842 by Edwin Henry Landseer

英国としては、1838年に勃発した第1次アフガン戦争で、アフガン人の抵抗を受けて4年後のこの年に敗退。















The Last Stand of the 44th Regiment at Gundamuck 1842 by William Barnes Wollen

一方、1840年に勃発したアヘン戦争では清国に勝利し、この年の8月29日に締結された南京条約で香港の割譲を勝ち取っています。











The signing and sealing of the Treaty of Nanking painted by Captain John Platt, Bengal Volunteers and engraved by John Burnet

そんな帝国主義真っただ中の時代に発行されたファージング銅貨を見てみましょう。




























表は、左を向いたビクトリア女王の肖像です。

ビクトリア女王の肖像は次の3種類があり、

1.Young Head (1838-1860)

2.Bun Head (1860-1894)

3.Old Veiled Head (1895-1901)

この肖像は、一番最初のYoung Headの肖像で、冒頭にも書いた通り、即位当時の18歳の姿を表しています。

銘は、VICTORIA DEI GRATIA 1842(Victoria by the Grace of God)。

彫刻師は、英国王立造幣局のWilliam Wyon (1795-1851)で、首の断面にWWのイニシャルが浮き彫りになっているはずですが、見えますでしょうか。























裏は、左手でトライデント(三叉槍)、右手でユニオンジャックの盾を持ったブリタニアが右向きに座っています。

そして、下には、

左:シャムロック(三つ葉のクローバー)の花(アイルランドの国花)

中央:チューダーローズ(バラ)の花(イングランドの国花)

右:あざみ(スコットランドの国花)

と、それぞれの国花が描かれています。

銘は、BRITANNIAR:REG:FID:DEF: (Queen of the Britains, Defender of the Faith)。

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国名英国
金額1ファージング
発行年1842年
統治者ヴィクトリア女王(1837-1901)
硬貨タイプ標準流通貨
材質
重量4.72g
直径22mm
厚さ1.6mm
鋳造数1,290,200
鋳造場所英国ロンドン
参照番号KM#725, Sp#3950

2021年5月18日火曜日

英国 ビクトリア女王 ファージング銅貨  1841年

英国で1841年に鋳造された、1ファージング銅貨を紹介します。

1ファージングは、4分の1ペニー。

直径は22mm、重さは4.72gです。


この年、ビクトリア女王は22歳(ただし、肖像は18歳の時のもの)でした。

後にエドワード7世として即位した、長男のアルバート・エドワードが誕生した年です。

5歳のアルバート・エドワード by Franz Xaver Winterhalter, 1846






















5歳のアルバート・エドワード by Franz Xaver Winterhalter, 1846

また、英国としては、アヘン戦争(1840-1842)、第1次アフガン戦争(1838-1842)の真っ最中でした。

そんな時代に発行されたファージング銅貨を見てみます。


















表は、左を向いたビクトリア女王の肖像です。

ビクトリア女王の肖像は次の3種類があり、

1.Young Head (1838-1860)

2.Bun Head (1860-1894)

3.Old Veiled Head (1895-1901)

この肖像は、一番最初のYoung Headの肖像で、冒頭にも書いた通り、即位当時の18歳の姿を表しています。

銘は、VICTORIA DEI GRATIA 1841(Victoria by the Grace of God)。

彫刻師は、英国王立造幣局のWilliam Wyon (1795-1851)で、首の断面にWWのイニシャルが浮き彫りになっているはずですが、残念ながら不鮮明です。























裏は、左手でトライデント(三叉槍)、右手でユニオンジャックの盾を持ったブリタニアが右向きに座っています。

そして、下には、

左:シャムロック(三つ葉のクローバー)の花(アイルランドの国花)

中央:チューダーローズ(バラ)の花(イングランドの国花)

右:あざみ(スコットランドの国花)

と、それぞれの国花が描かれています。

銘は、BRITANNIAR:REG:FID:DEF: (Queen of the Britains, Defender of the Faith)。

ちょっと摩耗と引っ掻き傷がありますが、それも180年前から日常生活で使われていた味というものでしょう。

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2021年5月14日金曜日

カナダ エリザベス2世 「トロント市政150周年記念」1ドル銀貨    1984年

カナダで1984年に発行された「トロント市政150周年記念」1ドル銀貨を紹介します。


え? 赤いコイン?

そう思われた方、近所で見つけたアンティークショップで初めてこれを見た時に、私もそう思いました。

そのお店は基本的にコインを扱っておらず、キャビネットの中にはブローチや指輪が飾られていたので、赤くても全く違和感はありませんでした。

しかし、実際には、鏡のようにケースの赤色を反射した銀貨だったのです。

流石はプルーフ(鏡面仕上げ)です。

銀の含有率は50%。

重さは23.3276グラム、直径は36.07mm、厚さは2.95mmあります。

表側には、ティアラを被った右向きのエリザベス2世が描かれています。


カナダの貨幣に描かれているエリザベス2世の肖像は全部で4つあり、これは2番目のものです。

Royal Canadian Mint



1.使用期間1953年ー1964年 27歳のエリザベス女王

2.使用期間1965年ー1989年 39歳のエリザベス女王

3.使用期間1990年ー2002年 64歳のエリザベス女王

4.使用期間2003年ー現在    年齢不詳のエリザベス女王

周りの銘は、ELIZABETH II D・G・REGINA。

ラテン語の、ELIZABETH II DEI GRATIA REGINA の略で、

Elizabeth II, Queen by the Grace of Godという意味です。

彫刻師は、英国人の Arnold Machin 氏。

因みに、彼のデザインは英国の通常切手にも使われているそうです。




裏側には、トロント市のスカイラインを背景にカヌーを漕ぐ先住民が描かれています。


そして、周りには、CANADA DOLLAR。

カヌーの下には、1834 TORONTO 1984 の文字が見えます。

裏側の彫刻師は、トロント出身の David Craig 氏です。


尚、このプルーフ銀貨は、立派なケース入りです。



説明文書も付いています。


フランス語の方が得意な方はこちらをどうぞ。


流石はカナダ。

必ず英語とフランス語です。

日本語もあれば尚良いのですが我儘は言いません。

国名カナダ
金額1ドル
発行年1984年
発行枚数732,542(プルーフ)
統治者エリザベス2世(在位1952 - )
硬貨タイプ非流通貨(トロント市政150周年記念)
材質銀(.500)
重量23.3276g
直径36.07mm
厚さ2.95mm
参照番号KM#140

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2021年1月7日木曜日

英国 1851年 ビクトリア女王 The First of May 1851

今回は、ビクトリア女王が描かれた "The First of May 1851" をご覧下さい。

この絵画は、1851年に、ドイツ人画家の Franz Xaver Winterhalter によって描かれました。

The First of May 1851 by Franz Xaver Winterhalter, Royal Collection
The First of May 1851 by Franz Xaver Winterhalter, Royal Collection

ビクトリア女王が、第7子であるアーサー王子を抱き、その後ろにはアルバート公が立っています。

そして、アーサー王子の名付け親であるウェリントン公爵が、誕生プレゼントを献上しています。

1851年5月1日は、アーサー王子の1歳の誕生日でした。

そして、偶然にも、ウェリントン公爵の82歳の誕生日でもありました。

更に、ロンドンのハイド・パークで催された第1回万国博覧会の開会日でもあり、ウェリントン公爵の左肩の彼方に、会場のクリスタル・パレス(水晶宮)も見えています。


<参考>

1851年ではありませんが、1850年のビクトリア女王のファージング銅貨をご覧下さい。

ただし、この横顔は「Young Head」と呼ばれるもので、女王が18歳の時のものです。




また、こちらは、ウェリントン公爵が1834年にオックスフォード大学学長に就任した際の記念銅メダルです。




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2021年1月6日水曜日

英国 ビクトリア女王 ファージング銅貨  1850年

英国で1850年に鋳造された1ファージング銅貨です。



1ファージングは4分の1ペニーで、直径は22mm、重さは4.72gと小ぶりです。

1850年に作られた枚数は 430,080 枚で、ファージング銅貨としてはちょっと少なめです。



















表には、左を向いたビクトリア女王の肖像が描かれています。

ビクトリア女王の肖像は次の3種類があり、

1.Young Head (1838-1860)

2.Bun Head (1860-1894)

3.Old Veiled Head (1895-1901)

この肖像は、一番最初のYoung Headの肖像(即位当時の18歳のもの)です。

銘は、VICTORIA DEI GRATIA 1840(Victoria by the Grace of God) とあります。























裏には、左手でトライデント(三叉槍)、右手でユニオンジャックの盾を持った右向きのブリタニアが描かれています。

そして、下には、

左:シャムロック(三つ葉のクローバー)の花(アイルランドの国花)

中央:チューダーローズ(バラ)の花(イングランドの国花)

右:あざみ(スコットランドの国花)

と、それぞれの国花が描かれています。

銘は、BRITANNIAR:REG:FID:DEF.. (Queen of the Britains, Defender of the Faith)。

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国名英国
金額1ファージング
発行年1850年
統治者ヴィクトリア女王(1837-1901)
硬貨タイプ標準流通貨
材質
重量4.72g
直径22mm
厚さ1.6mm
鋳造数430,080
鋳造場所英国ロンドン
参照番号KM#725, Sp#3950

2020年4月2日木曜日

英国 ジョージ1世 1シリング銀貨 1723年

今回は、1723年に英国で鋳造された1シリング銀貨を紹介します。

1723年といえば、日本の暦では享保8年にあたり、暴れん坊将軍でお馴染みの八代将軍徳川吉宗の時代です。

そして、英国ではハノーバー朝開祖のジョージ1世の治世(1714-1727) でした。



アン女王ご崩御後、カトリックの国王を避けるために、英国がドイツから国王を迎えるとは、何とヨーロッパはインターナショナルなことでしょうか。

また、ドイツ生まれで54歳で即位したジョージ1世はドイツ語しか話さ(せ?)ず、政治はウォルポールにお任せだったとのこと。

「君臨すれども統治せず」

そう学校で習い、その言葉にどこか高尚な響きを感じていた私ですが、その理由が英語が話せなかったからとは!

色々面白いです。

銀の含有率が92.5%のスターリングシルバーで作られており、重さは6.02g、直径は26mmあります。






























表は、右向きのジョージ1世の肖像が描かれています。

ジョージ1世の肖像は2種類あり、

第1肖像は、1715年ー1723年、

第2肖像は、1723年ー1727年

に使われました。

この銀貨は、1723年と丁度端境期に作られたものですが、前者の肖像です。

周りの銘はラテン語で、GEORGIVS・DG・M・BR・FR・ET・HIB・REX・F・D と記されています。

英語にすると、George, by the Grace of God, King of Great Britain, France and Ireland, Defender of the Faith。

日本語では、ジョージ(1世)、神の恩寵によって、グレートブリテン、フランス、およびアイルランド国王、信仰の擁護者、でしょうか。

GEORGIVSは、ジョージでジョージ1世とは書かれていません。

言ってみれば、ルパン3世のおじいさんがただのルパンで、ルパン1世とは名乗っていなかったのと同じような感覚でしょうか。

M・BRは、Magna Britanniaの略で、グレートブリテン。

ただのブリテンではなくグレートブリテンなのは、1707年の合同法でイングランドとスコットランドの議会が統一されて、合併されグレートになったからかもしれません。

FRは、フランス。

なんでフランス?という話は、また別の機会にしたいと思います。

そして(因みに、ETはフランス語と同じでand)、HIBはHiberniaの略で、アイルランドのことです。

REXは、国王。

F・DはFidei Defensorの略で、Defender of the Faith、信仰の擁護者の意です。

彫刻師は、ドイツ・ザクセン生まれのJohn Croker (1670-1741) です。







裏は、中央にガータースター、その上下左右にジョージ1世の紋章が配されています。

上:左側はイングランドを表す3頭のライオン、右側はスコットランドを表す1頭のライオン

右:フランスを表す3つの百合の花

下:アイルランドを表すハープ

左:ハノーバー家の家紋

そして、この4つの紋章の間に、SSとCが斜めに2つずつ配されています。

このSSとCは、1711年に設立されたthe South Sea Company (SSC) 南洋会社のことで、このSSとCのデザインは1723年のみ使われました。

この1723年の銀貨は、1722年に南洋会社がインドネシアで発見した銀を持ち帰って鋳造されたとのことです。
(南洋会社の担当区域はカリブ海や南アメリカ方面で、アジアの担当は東インド会社だったのではないかと思うので、なぜインドネシアで銀を発見したのかについては、別途調べてみたいと思います。)

周りの銘はラテン語で、BRVN ET・D VX S・R・I・A: TH ET・EL ・1723・と記されています。

英語では、Duke of Brunswick and Lueneburg, Arch Treasurer and Prince Elector of the Holy Roman Empire。

日本語にすると、ブラウンシュヴァイク=リューネブルク公爵、神聖ローマ帝国財貨長官、及び、選帝侯、となります。

彫刻師は、スイス・ベルン生まれのJohann Ochs (1673-1749)です。

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国名英国
金額1シリング
発行年1723年
発行枚数不明
統治者ジョージ1世(在位1714-1727)
硬貨タイプ標準流通貨
材質銀(.925)
重量6.02g
直径26mm
参照番号KM#539.3, Sp#3647

2020年3月20日金曜日

4.なぜジョージ4世以降の銅貨の銘はBRITANNIAではなくBRITANNIARと最後にRがつくのか(まとめ編)

今回は、まとめ編です。

これまでの経緯は、以下を参照して下さい。

⇒ 1.なぜウィリアム4世以降の銅貨の銘はBRITANNIAではなくBRITANNIARと最後にRがつくのか(照会編)

⇒ 2.なぜジョージ4世以降の銅貨の銘はBRITANNIAではなくBRITANNIARと最後にRがつくのか(回答編1)

⇒ 3.なぜジョージ4世以降の銅貨の銘はBRITANNIAではなくBRITANNIARと最後にRがつくのか(回答編2)

<疑問>

「なぜジョージ4世以降の銅貨の銘は、BRITANNIAではなくBRITANNIARと最後にRがつくのか」

<回答>

ジョージ3世まで使われていたBRITANNIAはラテン語で、英語のBritain、つまり英国を表しているとのことです。

このブリタニアは国名であって、中央に描かれている女神とは違い、英国を擬人化したブリタニア女神のことではないとのこと。

一方、ジョージ4世以降に使われているBRITANNIARもラテン語だが、上記BRITANNIAの複数形の所有格であるBRITANNIARUMの略語であるとのこと。

その意味するところは、英語で of the British territories。

そして、コロン(:)の後のREX(国王)またはREG(REGINAの略、女王)とセットで、

BRITANNIAR: REX = king of the British territories (英国領の国王)、または、

BRITANNIAR: REG = queen of the British territories(英国領の女王)を表している。

ここでいうBritish territories(英国領)とは、イングランドとスコットランドのあるブリテン島と、アイルランド島、及び周辺の島々のことで、いわゆる海外の植民地のことではないとのことでした。


<銘の変更理由>

銘が変更された理由としては、1801年にグレートブリテン王国(イングランドとスコットランドの連合王国)が、それまで植民地だったアイルランド王国と連合したのが理由ではないかと提起。

それによって、British territories(英国領)と複数形に変わったのではないか、と。

この推測について、大英博物館に問い合わせたところ、明確な答えは得られませんでした。

ただし、アイルランドとの関連でいうと、アイルランドは古来 Hibernia と呼ばれ、Britannia とは別の名前であった、と付け加えてくれました。

If there is a connection with Ireland it may be because Ireland is traditionally represented by Hibernia, not Britannia, but this is just supposition on my part. Evidence for the change might be in one of the coinage acts, which are in Hansard in the National Archives. Or the Royal Mint Museum may know.

また、大英博物館の方との遣り取りを通じて、最終的な解決には、銅貨の銘だけでなく、金貨、銀貨の銘を含めた総合的な考察が必要だということが分かりました。

ということで、とりあえず一旦ここで中締めとさせていただきます。

最後に、今回の探求では、ビクトリア&アルバート博物館と大英博物館の学芸員の方に大変お世話になりました。

熱く御礼申し上げます。

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英国 エドワード7世 1ペニー銅貨 1910年

1910年に英国で発行された1ペニー銅貨を紹介します。 1910年は、エドワード7世の在位中(1901年ー1910年)最後の年に当たります。 エドワード7世はビクトリア女王の長男。 ビクトリア女王の治世が長かったせいで、即位したのは59歳の時だったとか。 若かりし頃の紅顔の...