今回は、1954年に鋳造されたニュージーランドのハーフペニー銅貨を紹介します。
いきなりで申し訳ありませんが、何を隠そう、この銅貨は、私の血と汗と涙の結晶なのです。
何しろ、あるアンティークショップに3か月間通いつめ、手の指を真っ黒にして、何千枚もあるペニー、ハーフペニー銅貨の中からようやく見つけ出した逸品なのですから。
思い返せば、あれは、ある9月の午後のことでした。
「こんにちは。こちらのお店ではコインは扱っていますか?」
「どんなコインかしら?」
「十進法になる前の、英国やその植民地などのコインなんですが」
「そういうのはないわね。うちにあるのは、ニュージーランドのコインだけよ」
そう言って、蓋を開けて見せてくれたのは、銅貨がぎっしり詰まった大きな宝箱でした。
「重くて移動できないけど、ここで好きなだけ見ていいわよ」
それ以来、その言葉に甘えて、何度も通いました。
目当ては、ある年のペニー銅貨とハーフペニー銅貨です。
一時はもう諦めようかと思ったこともあったのですが、頑張って通ったのです。
床に座り込んで、ひたすらコインを探す怪しげな私を、いつも笑顔で迎え入れてくれた女性店主には、宮迫ではありませんが、「感謝しかないですよ、感謝しか」。
それでは、果たして、この銅貨の何が凄いのでしょうか。
実は、この年のハーフペニーは、圧倒的に鋳造枚数が少ないのです。
下のグラフをご覧下さい。
1954年と1955年には、それぞれ240千枚しかつくられていないのです。
他の年と比べて、思い切り少ないのが、一目瞭然です。
前置きはこれくらいにして、ハーフペニー銅貨を見ていきましょう。
表は、月桂冠をいただいた右向きのエリザベス2世の胸像。
この胸像は、1953年から1955年に作られた、「肩ひもなし」(no shoulder strap)というタイプです。
因みに、1956年以降は、「肩ひもあり」(with shoulder strap)に変わっています。
ただ、その真相は、当初、金型の浮彫りが不十分で、また鋳造が弱かったことから、肩の服の折返しが消えてしまっていたようです。
ということで、後年、金型が作り直されたとか。
銘は、+QUEEN ELIZABETH THE SECOND
とてもシンプルで、英国やオーストラリアのように、DEI・GRATIA・REGINA (・F:D:) といったラテン語の文言は見られません。
この省略には、何か特別な意味が込められているのでしょうか。
彫刻師は、Mary Gillick で、肩の下の断面に M.G. のイニシャルがあります。
裏は、ニュージーランドの先住民族であるマオリ族の、装飾的なペンダントであるヘイティキ(Hei-tiki)が描かれています。
ヘイティキは、ティキ神話において、ポリネシアの神の一人で人間の創造主であるターネイによって創造された最初の人間であるとのこと。
これを持っていると、魔除けになり、幸運をもたらしてくれるらしいです。
ということで、私の家にもあります。
銘は、NEW ZEALAND HALF PENNY 1954 。
彫刻師は、Leonard Cornwall Mitchell (1901-1971) です。
そのアンティークショップの「宝箱」にはまだ未見の銅貨があります。
何とか、1955年のハーフペニー銅貨を見つけ出したいものです。
(それと、1956年の「肩ひもなし」(no shoulder strap)のペニー銅貨。
ヘイティキ様、どうか(銅貨)宜しくお願いします。
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